じょぶ日記

社蓄の一生

水ビジネス-110兆円水市場の攻防 吉村和就

これは仕事で水ビジネスに携わる機会があったので、手に取った本です。

 

日本の水ビジネスって大阪市を中心に"海外輸出"へと動いています。しかしながら、海外大手水メジャーと比較すると、日本のビジネスモデルは重大な欠陥があるんです。水不足が予見されている世界で、水ビジネスの今とこれからを描いた本です(2009年初版?とかなんでちょっと古い)。

 

1.日本が水不足?なわけないでしょ。

仮想水(ヴァーチャルウォーター)という概念を用いると、日本は実は水不足らしいです。乱暴に要約すると、多くの食料や工業製品は他国で生産されているわけで、それに使われている水は他国のモノでしょってことです。世界の工場が、日本から、中国、東南アジアに移る潮流の中で、至極まっとうな流れです。水大好きな著者なんで、多少扇動的に書かれていることを考慮して読んだ方がいいでしょう。

そんなこんなで、水の需要はアジア(最近ではアフリカ)を中心に高まっていきます。そして、海外事業の受注競争が本格化するとともに、日本の古いビジネスモデルに外資の黒船が来航するわけです。

 

2.日本の水ビジネス、いいとこは?

キレイな水にする技術、漏水させない技術です。下水の技術も素晴らしくて、やはり技術力において、日本は裏切らないわけです。

問題点は、技術は高いんだけど、それを主体的にまとめ上げる事業者がいないということらしいです。著者は、日本の水事業者を「指揮者のいないオーケストラ」と言っています。

 

3.日本と世界の違い

世界の3大水メジャーは、フランスのヴェオリアスエズ、イギリスのテムズウォーターで、民間が手掛けており、水事業の全てを運営する立場にあります。

日本においては、管轄は地方自治体で、技術者も自治体の中でまかなっています。地方自治体といっても、市町村レベルの小規模なモノなので、年を追って老朽化する水道管に歯止めをかけられず、資本力・維持管理能力共に、海外大手に追いつけないわけです。

 

4.日本のこれから

最近、日本でも、PPP・PFIを中心に、官民一体となった取り組みが海外進出、国内のビジネスモデル一新のために行われています。仏ヴェオリアの日本市場参入を皮切りに、外資もPPP・PFIに参加するようになりました。

実情はというと、日本の地方自治体の高齢技術者を、まぁまぁの待遇で民間事業者が受け取らなくてはならないという阿鼻叫喚の様相とのことです。そんな時代を乗り越えて、日本の水ビジネスが刷新され、海外に出ていくといいですね。

 

最近、様々な業界を調べていて思うのですが、総合力、運営能力という点で、日本の事業者は能力不足で、このグローバル化の時代に、搾取の対象になっているように思えます(まぁ、それもしょーがない話なのか)。

いずれにしろ、日本企業・自治体と外資がうまく連携して行う事業が(海外じゃ割と当たり前のことが)、これから増えていくのでしょう。